ジョンストンズ オブ エルガン|johnstons of elgin

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Empathetic People
Euan Craig

ジョンストンズ オブ エルガンが重要視しているサステナビリティ、クラフトマンシップ、ヘリテージ、イノベーションという4つのキーワードとシンクロした活動を行っている人物に焦点を当て、その取り組みや考え、地域についてインタビューを行う、Empathetic People。

今回登場するのはオーストラリア出身で日本の民芸の概念に影響を受け、1990年に来日以降、日本を拠点に現在では群馬県みなかみ町で生活と創作活動を行う陶芸家、ユアン・クレイグさん。

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン) Empathetic People ユアン・クレイグ

ユアン・クレイグさん
1964年オーストラリアのメルボルンで生まれ、1858年まで遡る陶芸の歴史を持つビクトリア州中部のベンディゴ市で育つ。自然、科学、芸術、哲学に触れ、健全で創造的なライフスタイルを送るための生涯の職業として、14歳で陶芸家を選択。窯元でアルバイトをスタートし、ラトローブ大学でセラミック・デザインの学士号を取得して卒業。オーストラリアで自身の窯元を経営した後、25歳で歴史ある陶芸の町、益子へ。人間国宝の島岡達三氏に師事し、1994年に益子で独立。職人歴は45年に渡る。

Sustainability

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

私が初めてサステナビリティという言葉を意識したのが1984年、大学の最終学年の時でした。

1985年にメルボルンで開催されたオーストラリア全国陶芸家会議で初めて気候変動の問題が持ち上がりました。人間の活動が地球の気候に影響を与えており、残り数年で壊滅的な影響になる可能性があることを知り、ショックを受けました。数千年とは言わないまでも、数百年は存在する可能性のある器を作る陶芸家として、もし私の製作過程で発生した汚染によって、それらの器が人類よりも長持ちすることになったら、それは何という許しがたい皮肉でしょうか? それ以来、私は生活から化石燃料を排除することに努めてきました。つまり、まず再生可能エネルギーで窯を焚く方法を見つける必要がありました。

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

環境への影響を鑑み、私は薪風呂や薪ストーブなどなるべく化石燃料からの二酸化炭素が出ないような生活を心がけています。

私が住むみなかみ町はユネスコエコパークに登録され、生物多様性の保護、自然と人間社会の共生という生物圏保存地域に指定されており、広大な森林、新鮮な空気、澄み切った水、壮大な景観、多様な動植物の生態地域など、豊かな自然環境に恵まれています。また、伝統的な農業が盛んで、新鮮な農産物が手に入り、地域社会が力強く支え合っています。みなかみ町は、新しい生活を築き、家族を養い、芸術を実践するための平和で刺激的な場所です。自分の居場所だと心から感じられる第二の故郷なのです。

制作の過程では、自然素材を使い、水は自宅の井戸から汲み上げ、粘土や釉薬には豊富で安全な鉱物を使い、薪は地元の廃材を使っています。ひとつひとつの作品には、各工程で働く自然の力の美しさが表現できるようにしています。

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

化石燃料の使用による温室効果や地球温暖化は人間、はたまた地球にとっての大きな問題と知り、私は自分の作業プロセスから化石燃料を排除することを心掛けてきました。木は現代の空気中の二酸化炭素を取り込み、成長し、燃やすと大気中に二酸化炭素が放出され循環しています。そこで、伝統的な穴窯や登り窯など、さまざまな薪窯を研究し、焼成してきました。

しかし、1994年に独立して工房を構えたとき、薪を燃やして火をおこす昔ながらの伝統的な窯は、火入れから窯出しまで数日から数週間かかること、温度を保つために複数人で交代しながら、火の加減を見ながら薪をくべていくため、大量の薪を使い、また1人では薪窯を焚くことが不可能であることに気づきました。私は1年かけて新しい速焚き窯を開発し、この窯を使えば従来よりも少ない時間と少量の薪で、伝統的な窯で焼くものと同じ成果を得ることができます。私は自分の開発した窯の設計を陶芸コミュニティに無料で共有し、現在では世界中の多くの陶芸家に使われています。

そうすることで環境への配慮がなされた窯を未来永劫、新たな改良などを次の世代が行い、より環境に良いものが生まれてくると信じています。

Craftsmanship

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ


Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

すべての工程を手作業で行うことで、粘土や自然の力との親密でとても個性的な表現になることを大切にしています。

陶芸家を生業としている人は、粘土を揉むところから、焼き上がった作品を窯から出すまでを1サイクルとすると、全ての制作を終えるのに少なくとも1カ月はかかります。工程はたくさんあり、どの工程も慎重に行っています。毎月300個から400個の作品を作っています。

工程は、まず土作りから始まります。磁器土と陶土の粘土を手作業で混ぜ合わせ、耐久性のある高温でも耐えられる半磁器粘土を作ります。その後、伝統的な木製の蹴ろくろを使い器を作り、2・3日して少し固まったらろくろに戻し、高台などの削りをしてから「飛び鉋」と呼ばれる規則的な削り模様のテクスチャーのある装飾を施します。作品により必要に応じて取っ手や注ぎ口をつけ、棚に並べて乾燥させます。完全に乾いたら、独自に調合した釉薬を部分的に掛けますが、ほとんどの陶器の表面は釉薬を掛けず土そのもののままです。窯の中に器を積み上げながら、畳で使われたイグサを器に巻いたり置いたりします。その後、薪窯で火入れから1320度まで焼成し、薪とイグサから出る灰や炎が自然な釉薬を作り出します。

全ての工程は前述にもあるように身の回りの自然から全て作り出すことが大きなこだわりです。

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ


Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

蹴ろくろの回転に合わせながら、生乾きの土の表面に湾曲し先のとがった鋼片を当て、当て方によって細かい線と太い溝を同時に刻んでいきます。とてもコツが必要な技術ではありますが、私が得意にしている技法の一つです。こういった積み重ねで出来上がる器は、表や裏もどこから見ても美しくあることが私にとってこだわりです。

Heritage

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

陶芸の学士を取得して大学を卒業すると、4年間スワンヒルで小さな陶芸工房を営みました。その頃、日本の友人から益子町の陶芸工房を紹介された関係で、1990年1月日本へ旅立つことにしました。

選んだ場所は益子町。

大学で日本の陶芸と民藝運動について学び、益子町に憧れを持ち、益子町は私にとって聖地であり、絶対に行きたいと思い決めました。濱田庄司を師とし彼自身も人間国宝であった島岡達三氏に弟子入りしました。来日当時は日本語を一切話せませんでしたが、日本語を猛勉強し、「民芸品は、素朴さと日常の実用性のゆえ美しく、民衆が民衆のために作るもの」という民芸の基本的な教えを学びました。

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

民藝哲学、特に機能芸術の健康的で自然な美しさと濱田庄司のような陶芸家たちのライフスタイルに影響を受けました。

1926(大正15)年に柳宗悦・河井寛次郎・濱田庄司らによって提唱された民藝運動というものがあります。当時は装飾を施した観賞用の作品が主流でしたが、彼らは手仕事によって生み出された日常づかいの生活道具を「民藝(民衆的工芸)」と名付け、美術品に負けない美しさがあると唱えました。

美は生活の中にあると語り、各地の風土から生まれ生活に根ざした民藝には、用に則した「健全な美」が宿っていると、新しい「美の見方」や「美の価値観」を提示したのです。

また、その運動を推進したのがイギリス人陶芸家のバーナード・リーチでした。彼は柳宗悦と共に手仕事と日用品の美しさを日本各地に広め、失われて行く日本各地の「手仕事」の文化を案じ、近代化=西洋化といった流れに警鐘を鳴らしました。物質的な豊かさだけでなく、より良い生活とは何かを民藝運動を通して追求したのです。

それは私の流儀の礎になっています。

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

私の自身のルーツの話をすると祖母がスコットランド系で、Euanという名前は、現在ではアイルランド、イギリス、フランスの一部地区に残る少数言語でもあるケルト語からくるものです。スコットランドはタータンが有名で、タータン登記所ではスコットランド国内のみならず、世界中のものが登録されていて、その中に私の家系のものも登録されています。

ここに登録されていないものはタータンを名乗ることができないので、誇らしく感じていますし、そんなスコットランドのアイデンティティも引き継いで大切にしたいのです。

Innovation

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私は「用の美」という言葉をよく用います。それは「器は作って終わるのではなく、使って初めて完成する。器を使う人の使いやすさや、最終的に器に盛られた料理との対話を想定した器づくり」を意味します。 マグカップ1つをとっても同様です。

取っ手は自然の重力を利用して自然なカーブを作り取り付けています。そうすることで人が手で持った時に、自然の重力を用いた形で作られていれば持ちやすく飲みやすい設計になるのです。

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

恩師の工房を卒業したとき、自分なりに自然の美しさを表現する方法を見つけなければならないと思いました。

「自然を自分の意のままに強制することではなく、自然が自らの可能性を発揮するのを導くことであり、自然の力が自発的に美を創造するのを生かすこと」だと理解しました。そこで私は、窯の中で焼いたときに器の表面に予期せぬ効果をもたらすようなものを試し始めました。たまたま窯小屋に古い畳表があったので、何かできるのではないかと思い、麻の縦糸からイグサの横糸を切り離し、次の窯焚きで焼く前の成形だけした状態の生の器に置いてみました。

驚いたことに、イグサに含まれる天然塩が燃えると柔らかく微妙なオレンジ色の閃光を放ったような緋色がつき、鉄、カルシウム、シリカなどの固形鉱物は炭化した繊維として残り、窯が1300℃以上になると繊細なガラス状の線になったのです。私は、この高温焼成に耐える薪窯と、高温に耐えられるガラスの原料でもある長石やケイ石などが含まれる磁器土と陶土をブレンドした半磁器土を作りました。そして、これまで使われていなかった資源である畳の廃材からイグサを再利用することができたのです。

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

半磁器土は高温に耐えられるだけでなく、陶土の荒い組織に磁器土が高温でガラス状になり隙間を溶け込むように埋めながら融合し強度が増します。これにより、電子レンジやオーブン、そして食洗機でも使用が可能になりました。また磁器土の繊細さと陶土の暖かみも表現できます。

師匠・島岡達三氏から、こんな教えを受けました。

「器の本来の目的は、食べ物を入れること。だから、器にとって一番大切なのは内側。器をつくる時には内側を整えるよう、意識しなさい」

私の願いは、作品に込められたこのような愛情を感じていただければ幸いです。この作品を作った自然の力とのつながりを感じ、友人と会話をするように楽しんで使ってほしいと思っています。器を選ぶ時は、実際に手に取り、煮物やおひたしを盛りつけたらどうだろうと、想像してみてほしいです。すると、大切に使い続けたいと思える器がきっと見つかることでしょう。

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

Johnstons of Elginについて

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

陶器とストールでは、異なるジャンルのように見えるかもしれませんが、その根底には、自然の一部であること、自然の素材を扱うこと、その素材が本来持っている性質を認識し、その性質を最大限に引き出すこと、といった意図で共通していると思います。

粘土であれ、木材であれ、メリノウールであれ、カシミヤであれ、素材の本質を理解し、新たな生命を与えることが、私たちの芸術であり工芸なのです。

私は職人として、ジョンストンズ オブ エルガンがその美しい製品に込めた思い、情熱、献身性に深く共感し感謝しています。これらの丁寧に作られたストールやニットウェアは、気持ちの良い肌触りで身体を包み込み、魂をも暖めると考えています。

Johnstons of Elgin(ジョンストンズ オブ エルガン)Empathetic People ユアン・クレイグ

人類が今後何世紀にも渡って繁栄していくためには、自然・環境・故郷に与える影響に対して、今、責任と行動を取らなければなりません。

ジョンストンズ オブ エルガンのサステナビリティ、クラフトマンシップ、ヘリテージ、イノベーションというポリシーは、伝統を土台とし、私たちの時代と来るべき次世代のニーズに対応しながら、未来へと進む道を示しています。

私自身の仕事と人生は、同じ原則の上に築かれていますし、今後も私たちの技術が、世界にそのメッセージを発信して人々に届くことを願っています。

Photo & Movie Masahiro Yamamoto

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